キング・オブ・コメディ
「どん底で終わるより、一夜の王になりたい」
公開年:1984
監督:マーティン・スコセッシ
上映時間:109分
コメディアンを目指すルパート・パプキンは、人気コメディアンのジェリー・ラングフォードの車に強引に忍び込み、自分の芸を見て欲しいと頼み込む。その場では承認したジェリーだったが、それは彼を追い返すための口実に過ぎなかった。その後もパプキンは度々ジェリーに面会を求めるが叶わず、彼の行動は徐々にエスカレートしていく。
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とにかくオープニングクレジットのあの静止画がたまりません。あれだけでもこの映画が名作とされている理由がわかります。
パプキンの向こう見ずで狂気的な面と、一方34歳で実家暮らし(母親の声のみが度々登場する)でコメディアン志望という悲しみの面(本人はおそらく悲しみを感じてないので、それも狂気的)が交互に描かれ、コメディというテーマでありながら、終始孤独を感じる作品でした。
彼が序盤に言い放つ「考えられぬことが起こる世の中だ」というセリフの通り、まさかの結末を迎えますが、それはもしかすると彼の妄想かもしれないという捉え方もできます。また、突如間に挟み込まれる、その時の状況とは真逆のシーンは、果たして妄想なのか未来なのかということが最後まで明かされることはありません。
中盤以降に起こるある事件のスリリングさと滑稽さや、ラストの感動的にも思える番組放送のシーンなど、どこを切っても緊張感が途切れない、素晴らしい映画体験でした。
ポール・トーマス・アンダーソンの「パンチドランク・ラブ」以降の作品への影響も感じさせ、後世にも余韻を残す伝説的な物語であることは間違いありません。
▼ポール・トーマス・アンダーソン監督の3作目。コメディアンを描いた話ではありませんが、実際のコメディアンのアダム・サンドラーが怪演を見せている点で、この作品に通じるものがあります。