ハードエイト
「これは本当にまずい状況だぞ」
公開年:1997
上映時間:101分
母の葬儀代を稼ぐためにカジノへ行き、一文無しになったジョンはコーヒーショップでシドニーと出会う。無償でカジノのコツや金を提供し、母親の葬儀代まで面倒を見るシドニー。最初は疑っていたジョンも、やがて信頼しシドニーの相棒になっていく。そんな中、シドニーにかかってきたジョンからの電話が大変な問題を巻き起こす。
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ポール・トーマス・アンダーソン監督の処女作。シンプルなストーリーですが、前半のカジノのシーンの高揚感はしくみが何もわからなくても楽しく、コーヒーショップのシーンや、中盤に起こる事件では、この後のPTA作品に通じる緊張感のある長回しも見れます。
この映画の火起こし役とも言えるサミュエル・L・ジャクソンが演じるジミーの、誰が見てもヤバイやつ感が素晴らしいです。彼の存在もあってか、この監督の他の作品ではあまり感じることのないタランティーノ作品のような雰囲気もあります。
ラストが少しあっさりしていて、これで解決?という感じもしなくもなかったですが、気軽に見る作品としてはかなり楽しめる作品ではないでしょうか。
▼ポール・トーマス・アンダーソンの2作目。AV男優ダーク・ディグラーの人生を描いた超名作です。
僕のワンダフル・ライフ
「犬生の意味とは?」
公開年:2017
監督:ラッセ・ハルストレム
上映時間:98分
過去の記憶を持ったまま転生を繰り返すある犬は、一つの犬生(犬の人生)の中でイーサンと出会いベイリーと名付けられる。イーサンとの暮らしと、その後も転生を繰り返す中で様々な人間との暮らしに関わり、生きる意味を見つけて行く。
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予備知識なく見たので、オムニバス映画ということに気づくのに時間がかかってしまいました、、基本的に犬目線で話が進み、犬の心情がナレーションで表され、人間「あっち行け!」犬「あ、遊んでくれてる!」と、犬の思いが人間の心理とは真逆だったりするのが面白かったです。
ただ、いかんせんオムニバスなので、犬の死で物語がほぼリセットされ、中盤以降は伏線もなく(ラストの話は最初と繋がっていますが)、犬の死もほとんど脈略がなく突然で、ご都合主義だなぁ、、と思わされてしまうことが多々ありました。
イーサンとの物語以外はほとんど印象になく、結婚する男女の話とか、その次のほとんど外で繋がれたままの暮らしとか(ここは寂しさや葛藤の部分かもしれませんが)、そのストーリー必要?と不思議な気持ちで見ていました。
見所としては、犬の名演でしょうか!これは本当にすごいので、そういう意味では一見の価値ありです。
▼動物ものでは、こちらの方がオススメです。
ダークナイト
「ヒーローとして死ぬか、生きて悪に染まるか」
公開年:2008
監督:クリストファー・ノーラン
上映時間:152分
ゴッサムシティの銀行が、ジョーカーの手によって強盗を受ける。一方世間から悪評をうけているバットマンは、悪に動じない地方検事のハービー・デントにゴッサムシティの光を見出し、自分の引退を考えながら、彼のマフィアを摘発する計画に協力をする。そんな中デントの元にジョーカーからメッセージが届く「バットマンはマスクを脱いで正体を見せろ、それまで俺は毎日市民を殺す」と。
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マネーロンダリング、RISO法など、、話を真面目に追うと正直全然ついていけなかったのですが、ジョーカーのキャラが物語の推進力になっているので、それを見ているだけでも十分物語を楽しむことができます。そして心の奥底でジョーカーの心理に共感してしまう部分もあり、それがこの映画の恐ろしいところです。
一方バットマン(ブルース)といえば、偽のバットマンに怒ったり、元恋人をデントに取られたことに嫉妬したり、パーティ会場へ両手に美女を抱えてヘリで登場したりでとにかく最悪なのですが、一応これも意味なく嫌なやつというわけではなく、最終的にはこの映画のタイトルの「ダークナイト」にもつながっていくのです。
個人的にかなりグッときたのは、ジョーカーの口が裂けている理由を話す場面、ある人には「親父に切られちゃってさ」と話したり、また別の人には「自分で切ったんだ」とか言ってみたり、言うたびデタラメなことを結構長めに話すのが可笑しくて、俺の人生は全部ジョークなんだと言わんばかりのキレっぷりが見事でした。
まとめるとヒーローはつらいよ的なお話で、きっとみんなジョーカーになれたら楽だけど、でもそんなことになったら世界は終わるし、秩序を保つためには両手に美女を抱えて登場する人も必要なんだ、ということを考えさせられる映画でした。
The Dark Knight - Official Trailer [HD]
▼ジョーカー役のヒース・レジャーの代表作といえば、こちらもおすすめです。
クワイエット・プレイス
公開年:2018
監督:ジョン・クラシンスキー
出演:エミリー・ブラント、ジョン・クラシンスキー
上映時間:90分
音に反応する謎の生き物の出現した世界で、音を立ててはいけない状況で生活をする家族は、次男を生き物に殺されてしまう。その数年後、母の出産の予定日が近づいたある日、父と長男は食料を探しに、姉は父と喧嘩をして家出をする。そんな中、予定日よりも早く母の破水が始まった。
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「音を立ててはいけない」という強烈な制約によって、凄まじい緊張感を生んでいる作品です。中盤のおそらく宇宙一嫌な出産シーンでは、声を出せない出産って地獄、、と見ていて本当に息苦しかったです。
食器が葉っぱだったり、あらゆるものが糸で編み込んだもので作られていたり、音を出せない状況が生活の道具で紹介されるのもとても良かったです。この映画の中で唯一音楽がかかるラブシーンも、イヤホンでこっそり聞きあうという泣かせるものです。ロケットのおもちゃ、目覚まし、花火など音の出るアイテムを使った仕掛けも見ものでした。
難点をあげるなら、エンディングにつながるあるアイテムの効果が、観客にはかなり早めにわかってしまうので、最後のシーンではさほど驚きを感じれなかったところです。とはいえ驚くほどあっさり終わるので、90分の程よい感じで楽しめるホラーエンターテイメントの傑作だと思います。
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▼そういや先日レビューを書いたこの映画もエミリー・ブラント主演でした。
スキャナーズ
公開年:1981
出演:スティーブン・ラック、マイケル・アイアンサイド
上映時間:104分
住所不定のスキャナー(超能力者)であるカメロンは、一般人をスキャンしているところを、研究者であるルース博士に保護される。その一方、コンセック社が行うスキャナーの実験中に、潜入していた同じくスキャナーのレポックに、コンセック社が抱えるスキャナー数人が殺される。ルース博士はカメロンに、社会の崩壊を目指すレボックを滅ぼせと伝える。
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ダークでシリアスな雰囲気を持つこの作品は、アート映画のようで美しくもありますが、物語としては少年ジャンプにも掲載できそうなバトルものでもありますので、あまり堅苦しくなく楽しむことができました。
見所はやはり、序盤の実験中に起こる悲劇がすごすぎて笑っちゃうぐらいの迫力でした。そして最後の超能力バトルは、派手なアクションが全くないのに(というか、みんなじっとしてるだけ)、手に汗握って興奮してしまいました。
超能力のバリエーションも様々で、電話線からコンピューターに攻撃するという発想はなかなかスリリングで(仕組みは全くわかりませんが)、その後もまさか!と言う結果になります。
エンディングももちろん言えませんが、唸ってしまうぐらいのなるほどなオチで、最初からエンドロール間際までこんなに楽しめる映画はなかなか出会えないと思います。血が飛んだり、暗い雰囲気が苦手でない方は、是非ご覧になってください。
▼クローネンバーグ監督の2005年の作品。クローネンバーグの映画はどれもオススメです。