マカロニ映画館

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キングオブコント2019

キングオブコント2019」のネタについてレビューします。ネタバレを含むので、未見の方は番組を見てからご覧になることをお勧めします。ネタのタイトルは、こちらで勝手につけたタイトルです。

 

1stステージ

うるとらブギーズ「催眠ショー」

人と同じことを同時に話してしまう癖のある催眠ショーの客と、催眠術師のやりとり。

最初に感じるのは音響的な気味の悪さと、その理由が二人が同時に話しているからだと判明したときの滑稽さ。緊張と緩和が、始まってものの数秒で体感できる秀逸なスタートでした。

内容としては二人の噛み合わなさを笑うものでシンプルですが、耳から入る情報がお笑いでは感じたことのないものなので、最後まで新鮮な気持ちで見ることができました。客であるカシモトのキャラクターも、ほどよく愛せる気持ち悪さで良いバランスでした。設定を活かして、二人以外の人物を自然に登場させている部分も素晴らしかったです。

 

ネルソンズ「練習前の野球部」

野球部の部室でキシから耳にした噂話を、口止めされていたにもかかわらず軽々と先輩アオヤマに話すワダ。そんなワダの口の軽さが話を縺れさせていく。

狂言回しであるワダのキャラクター性が笑いを誘うコント。キシとアオヤマの攻防が場を盛り上げ、後半は実は一番怖いのはワダということに気づかされる部分でさらに笑いが生まれます。

終始ワダのキャラクターでもっているコントなので、3人の良さが活きたコントが見たかったなという印象でした。

 

空気階段「タクシー」

以前あなたを乗せたことがあると客に伝えるタクシーの運転手と、それを否定する客とのやりとり。

前半部のサンドイッチマン的な低音度なやりとりは安定した面白さなのですが、幾分運転手の話す内容がぶっ飛びすぎてて、大きくは笑えないように感じました。

しかしそれは伏線で、後半に同じ姿の客が乗車し、運転手の話が事実だったと判明する場面で大きく盛り上がります。

前半後半と状況が一転する展開は脚本として素晴らしいと思いましたが、盛り上がりが少ない前半の割には、後半もそこまで大きな面白みを感じることができませんでした。

 

ビスケットブラザーズ「再会」

旅の目的を忘れた男女が出会い、あるきっかけで二人は過去を思い出す。

序盤は少年ギャグ漫画的な強烈なキャラクターに大きなインパクトを受けますが、二人がかつて結婚を誓い合った仲だと判明してからはキャラクターが一変し、寒いほどの恋愛ドラマに切り替わるポイントで大きな笑いとなります。

キャラクター性の飛躍と、恋愛パートの掛け合いの部分が大変面白かったのですが、このコンビはドラマ性がどうとかいうコンビではないと思うので、希望としてはドラマ性は前半のみで完結させ、もっとしつこいぐらいの掛け合いを見たかったなあと思いました。

 

ジャルジャル「野球部の指導」

野球部の先輩が後輩にピッチングの指導を行うが、その後輩は先輩の特殊すぎる性質に疑問を感じ、解決させようとする。

日常の中に起こる理解不能の出来事を、解決しようとするほど特殊性がよりあらわになり、さらに非日常へと連れ込まれるという、ジャルジャルらしい不条理コントです。

先輩の声が遠くで聞くと英語に聞こえるというのは、やや突飛すぎる設定ではありますが、ネタの構造としては、解決に近づく→遠ざかる→近づくの繰り返しはゲーム的な楽しさがあり、それが設定の取っつきにくさを和らげているように感じます。

斬新な設定を、巧みな構成と演技力で理解させ笑いにつなげる技術に非常に感心しましたが、巧みさが際立ちすぎて一度見ただけでは素直に笑えないという点もありました。

 

どぶろっく「農夫と女神」

病の母を救うため森に薬を探しに来た農夫と、農夫の願いを叶えようとする女神。女神が願いを聞くと、予想した願いとは異なる願いを訴える農夫に翻弄される。

生演奏によるミュージカル風のコント。歌としても盛り上がるポイントで、農夫の願いを高らかと歌い上げ、この日一番の笑いが起こっていました。まさに狙い通りといった感じでしょう。

前半のどうなるのかという緊張感と、放送禁止ギリギリのワードを「言ってしまった」という呆れが大きな笑いに繋がったのでしょう。もちろん、女性客が多い中でドン引きされる可能性もあったわけで、テレビ局としても思い切ったな、、という意味での感動がありました。

「イチモツ」の一点張りと思いきや、歌や演技力のうまさもあってこそ成立するコントで、彼らが今まで培って来た笑いの集大成と言えるのではないでしょうか。

 

かが屋「花束」

※注  コメント欄にご指摘あり、客は毎日来店しているわけではなく、日めくりカレンダーで示されている通り、1日の出来事を描いたコントでした。設定にまるで気づいておらずすみません、、以下はあえて訂正はせず、掲載します。

 

閉店時間に花束を抱えたまま座り尽くす客と、それを気遣う店員。最初は笑っていた店員だったが、毎日繰り返し来客する客に心を打たれていく。

出だしの花束の大きさのインパクトと客の表情で、言葉を使わず一枚の絵として設定を伝えるやり方は見事で、しっかり笑いも生まれていて、オープニングとしてはこの日一番の出来だったと思います。

その後は、奇しくも先ほどのどぶろっくと同じ天丼(シチュエーションが真逆なため印象は全く違い、気づいた方は多くないはずです、、)で、オープニングと同じ絵に着地することで笑いが生まれる構成です。

どぶろっくと大きく違う点は、こちらは言葉ではなく、表情や音楽で伝えるやり方をしており、個人的にはこちらの方が技術的には上だと思います。笑いの爆発はありませんでしたが、笑いの量=点数ではないこのコンテストで、こういうコントがもっと評価されてもいいのになーと思っています。

 

GAG「男女お笑いコンビ」

フクイの彼女が、一緒にお笑いコンビを組んでいる相方のサカモトを家に連れてくる。初めはサカモトの人の良さに感心するフクイだったが、二人のネタを見た途端、設定に疑問と怒りを感じる。

ネルソンズと同じく、こちらもフクイのキャラクターで笑いを誘うコントですが、ぱっと見のインパクトで言えば明らかに他の二人の方が印象が強く、絶妙なバランスで成り立っているトリオだなあと思いました。

前半のジャブ打ちのような笑いから、中盤のネタ見せ後からこのネタの本質がわかりやすく提示され、笑いも尻上がりに大きくなります。全ての設定が中盤以降笑いにつながる無駄のない構成は、このトリオの真骨頂といえるのではないでしょうか。

いままでと大きく違うのは、フクイの言葉が客の考えの一歩先をしっかり掴んでいたことでしょうか。「お笑いって異常な世界やな」という確信をついた言葉も大きく盛り上がっていました。

 

ゾフィー「記者会見」

不倫報道の記者会見を行うコマネ。しかし腹話術の人形を抱えて会見をする様子に怒り出す記者。それに対して、真っ当な意見で反論し続ける人形のフクちゃんだった。

人形のフクちゃんの表情に可笑しみを感じさせる一点突破のコント。ずるいなと思いつつ笑ってしまうので、面白ければどんな手を使ってもアリなコントという舞台をうまく使った設定と言えるでしょう。

ある意味では、現実での不倫報道に対して一石を投じてるという爽快さもあり、コントの中だけでは収まらない笑いで、その攻めた姿勢も評価したい素敵な内容でした。

 

わらふじなるお「バンジージャンプ

バンジージャンプを飛びに来た客と、淡白な性格のインストラクター。その性格に不満をぶつける客だったが、次第に彼の狂気に触れ、巻き込まれていく。

オーソドックスな狂人とのやりとりで笑いを誘うコント。二人のワードセンスの良さが心地よいしゃべくりコントで、展開もサクサクと進むので見ていて気持ちよかったです。

「気が早い」というインストラクターのキャラが序盤に示されますが、ややそれがわかりにくかったのと、それが後半には活きてこないと言う点では少し勿体無かったかなと思いました。

 

ファイナルステージ

ジャルジャル「泥棒」

住人が在宅中に侵入してしまう泥棒。必死に言い訳をする泥棒だったが、適当に言った言い訳が奇跡的に住人の過去と一致してしまう。

言い逃れできない状況にもかかわらず、それを乗り切ろうとする泥棒と、泥棒の予想を上回る奇跡の連続に笑いが起こるコント。二人から発せられる登場人物の独特なネームセンスが、尾を引いた笑いにつながっていました。逆に言えば、面白い名前を言い合うだけのコントにも見えてしまい、少し期待はずれだったかなという印象でした。

ラストの後味の悪いオチはこの大会では評価されませんでしたが、やりようによっては悪いオチではないと思いますので、いつかどこかのコンビが後味の悪いオチで大受けする日を夢見ています。

 

うるとらブギーズ「サッカー中継」

サッカーの解説をするレポーターと解説者。レポート中に話が脱線し盛り上がってしまい、キックオフやゴールを見逃してしまう。

緊張感のある場面で、我を忘れて夢中で話し込んでしまう子供のような二人がハッピーな笑いにつながるコント。ゴールを見逃す瞬間にピークがあると思うのですが、それ以外の二人の会話もちゃんとクスクス笑えるので、退屈する隙がありませんでした。やはりこのコンビは演技力が高いです。

笑いこそありましたが、既視感のあるこの設定では決勝では評価されなかったのかもしれません。

 

どぶろっく「山男と女神」

斧を池に落とした山男と、山男の願いとは裏腹に、別の願いを叶えようとする女神。

1stステージと配役が変わっただけなので、特にレビューも何もありませんが、ほとんど同じ内容にも関わらずちゃんとウケていたので、設定と、会心のワードの勝利でしたね。

 

優勝はどぶろっく。もちろん笑ったし、文句はないのですが、こういうみんなが何も考えずに笑える楽しいネタが評価されてしまうと、複雑な設定を作って頑張っている芸人にはつらいものがありますね、、。このどぶろっくのコントが評価されることで、今後この大会はこういうコントばかりになってしまうのでは、、という危惧もあります。

審査員については、松本さんの評価は以前に比べて鋭さが減った気がして、ただただ平均点といった感じで残念です。他の人に関しても、ただ単に笑いの量で評価しているような気がしてしまいました。そんな中かが屋に高得点をつけた設楽さんにのみ、お笑いの未来を感じることができて良かったです。

個人的な評価としては、うるとらブギーズの1本目が素晴らしく、2本目も優勝を逃すほどの出来では決してなかったので、準優勝は残念です。

笑い以外の部分で一番感動したのはかが屋ゾフィーのネタ。笑いだけでは収まらない、別の感情が盛り上がる素敵なコントでした。

GAGのコントは素直に面白く、もっと評価されて良かったと思います。1stでジャルジャルに勝っていたら、優勝もあったと思います。

色々思うところもありましたが、様々な芸人の命をかけたコントを見ることができる素晴らしい大会ですので、来年以降も期待しています。